日本における起業は、大企業による雇用の受け皿が広いために低調である。20代から30代の起業は極めて少ない。技術出身者がCEOとCTOを兼任するスタートアップは戦略性に欠ける傾向がある。その中で、半導体ウェーハの検査装置で成功したRAYTEXは、非技術系のCEOが営業面とビジネスモデルの構築で能力を発揮しており、戦略が技術に先んじることを示した好例であった。製品開発は非正規雇用の人材によってなされ、新しい製品ラインの追加は、外部から事業を買収して行った。しかしながら、当初のビジネスモデルが機能せず、試行錯誤の後に成長機会を発見してから新たなビジネスモデルを構築するので、株式公開まで概ね15年以上かかっている。 日本の大企業で長期間勤務しながらキャリアのマネジリアル・ラダーを登って上級管理職になる技術系の人材は、マネジメント職であるにも関わらず、その職位を得るためには、技術成果が抜き出ている必要がある。技術成果を挙げるべく努力する傍らで、OJTと自力でマネジメント・スキルを身につけて組織を統括している。 以上のような状況の中では、技術系出身の起業家も大企業の経営者も、キャリアの中でマネジメント・スキルを磨く時間が少なく、企業経営が戦略不全になる危険性をはらんでいる。
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