研究概要 |
本研究は、企業間ネットワークの自律的な生成プロセスについて、その実態を明らかにするとともに、マルチエージェントシミュレーションンにより、ネットワークの創発プロセスを再現することを目的としている。既存のネットワーク分析では、中心性や構造的空隙といった関係性の分析であり、それらがどのような性質をもった個体によって生成されたのかといったミクロ分析が明らかにされていない。一方、個々の主体同士の競争と協調のダイナミクス研究では、どの個体が進化論的に勝ち残ったのかといった議論が中心であり、ネットワークの構築といったマクロ的視点に欠けている。本研究は,このマクロとミクロの分析のリンケージを試みることを目的とする。 研究の目的は、企業間ネットワークの自律的な生成プロセスについて、ネットワーク分析によってその実態を明らかにするとともに、マルチエージェント・シミュレーションに基づき、ネットワークの創発プロセスについてシミュレーションを行うことである。平成21年度の成果・内容をまとめると、主として以下の3点に集約される。 1前年度パイロット調査によって作成した市民ネットワークに関するアンケート調査票を用いて,実験的に市民ネットワーク(守秘義務のため市民ネットワーク名は公開しない)の構造分析を実施した。十分なサンプル数が得られなかったため,有意義なネットワーク分析を試みることはできなかったが,これにより,一般市民のネットワーク構造をアンケート調査などにより調査することが困難であることが判明した。 2新たなネットワーク分析として,2部グラフを作成し間接的にネットワーク構造を把握する方法が妥当であるとの結論を得た。そこで分析対象を変更し,一般企業のネットワーク構造を把握するためのデータ・ベースを作成した。これは,現在も進行中であり,2400社以上の企業間ネットワーク構造を把握するデータ・ベースが完成する。22年度は,データ・ベースの作成を効率的に進めるために,コンピュータ・プログラム化する予定である。 3ネットワークに関する理論的検討を前年度に引き続き実施した。研究成果として公表した。研究成果は、国際学術会議,学術論文3本である。
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