平成19年度のインタビュー調査(多国籍企業8社と大学・研究所など8組織)につづいて、平成20年度には多国籍企業5社およびテーマに関連する大学など6組織にインタビュー調査を実施した。 これまでの国際経営の歴史と最近の進展によって、英語で仕事のできる日本人は増大している。英語を共通言語にして国際経営を行うには、英語のできる日本人が必要であるが、日本親会社の本社の2割程度の日本人がこの要件を満たしていればよいとの意見が聞かれた。相当数の多国籍企業はこの水準に達している。 多国籍企業では、経営理念や基本的な経営方法(何々ウエイなどと表現されることが多い)は、親会社と海外子会社のすべての経営幹部、上級管理者などに理解・共鳴してもらうように努力されている。他方、具体的な行動様式や情報のやりとり、意思決定の仕方などについては、根回し、インフォーマルな情報の交換や相談の重視、その反面として正式な会議での議論が少ないなどのような日本的な特徴が減り、さまざまな国の文化に根ざした多様な行動や態度を容認する方向に変化している。多国籍企業がめざしているのは、価値統合と行動多様性の両方であると考えることができる。 全体として、多国籍企業の国際経営マネジメントは、着実に変化している。日本親会社のなかに海外勤務経験者の日本人が増大し、社長など経営幹部にも海外経験者が多い。外国人の役員も増えており、海外子会社からの外国人の逆出向者や出張者も珍しくない。英語の使用がふえ、会議の進め方や情報のやりとりのあり方も変化し、意思決定のあり方にも変化がみられる。内なる国際化は進展している。ただ、変化は時間をかけて進む性格のものであり、漸進的である。
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