保険種目構成とその他の要因が経営効率にどのように影響するのかを解明することは、業界再編成にある保険企業の経営にとって有益である。2007年度には、1970〜2005年の36年間を対象として、自動車保険、自賠責保険、火災保険、傷害保険によって構成される保険契約ポートフォリオが損害保険企業の経営効率に与える影響を分析した。2008年度には、1996年の規制緩和を勘案して、対象期間を1970~1995年と1996~2005年の2期に分割して分析を行った。 さらに説明変数としてポートフォリオ比率と市場占有率の2種を試み、その他の変数として自動車保険価格と金利を含めた。その結果、ポートフォリオ比率を用いた分析では、全期間をとおして4保険種目の比率が個別に増大すれば効率性を低下させるという結果が得られた。また自動車保険単価の上昇と効率性上昇との関係も明確に示された。金利については有意性が否定された。規制緩和前では4種目の比率については同様の結果が得られたが、自動車保険単価に有意性はなかった。規制緩和後も4種目の比率については同様であり、また自動車保険単価と金利の上昇が効率を低下させるという結果が得られた。 ポートフォリオの市場シェアを用いた分析では、全期間では自動車保険と火災保険のシェア増加が効率を上昇させ、自賠責と傷害保険については逆の結果が得られた。自動車保険単価と金利の上昇は、ともに効率を増大させることがわかった。規制緩和前において自動車保険と火災保険のシェア増加が効率を上昇させるという結果は同様であるが、傷害保険シェア、自動車保険単価と金利については有意性が消滅した。規制緩和後では自動車保険と傷害保険のシェア増大が効率を上昇させ、自賠責と火災保険は逆に低下させるという結果となった。また金利の有意性はなく、自動車保険単価上昇が効率を下げるという結果が得られた。
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