日米各2つの格付機関がおこなった企業の格付けの結果を、企業の財務データのみで説明できないかどうかを検討している。昨年度は単年度(2001年から2005年の5年間のデータを使用した)ごとにニューラルネットワークを使い説明力を測定してきたが、今年度は過去におこなった格付付与構造が別の年の格付をおこなうときに変化していないかどうかを中心に検討を進めた。これに関しても2001年から2005年の5年間のデータを利用している。具体的には2001年の格付付与構造が引き続く4年間大きく変化していないかどうかを算出してみた。この知見に関しては9月にドイツで開催された国際学会で報告した。 さらにデータ全体を対象とするのではなく、アプリオリに製造業だけのデータを取り出して同じ計算をおこなってみると、その構造は経時的な変化がないことが明らかになった。この知見に関しては10月にワシントンでおこなわれたINFORMSの年次大会で報告した。 このようにアプリオリに製造業のみというような人為的なデータの抽出方法ではなく、データの持つ性質から何らかのクラスタリングを行い、特異ないわゆる「ハズレ値」を持つデータを除去する方法を追求しようとしている。現時点では自己組織化マップというデータマイニング技法が有望であると思われる。これはデータが持つn次元のデータを2次元あるいは3次元まで次元を落とし、可視化できるので直感的である。ただそのアルゴリズムに起因するのか、使用しているソフトに対するパラメータの指定方法に問題があるのか、解には安定性が感じられない。 来年度はこの点を明確にし、この自己組織化マップの現時点の問題点を明確にし格付付与の構造の解明に努めたい。
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