日米各2機関による企業の格付けの結果を、一般に使用可能な企業の財務データみで説明できるかどうかを研究の対象としている。今年度は2001年から2007年の7年間のデータを使用して、ある年度の格付け構造(ニューラルネットワークによって算出されたウェイトを使用)が安定しているか否かを引き続く年度のデータに適用して検証した。当初から分析の対象は、財務構造が極端に異なる金融業を除いているが、製造業のほか電力会社、鉄道会社などさまざまな業種に属している。そのため異質な業種が含まれることによって格付の推定構造の精度が落ちることは容易に推定できた。そのため全業種を使った推定から、構造が比較的類似している製造業のみを抽出してそのデータのみで構造の推定を行ってみた。想像どおり比較的構造が類似している整造業のみで推定したほうが推定値は向上した。 さらにその中でも特異なデータを除去するためにいくつかの方法を試してみた。通常は分析の対象とする変数群を使ってクラスター分析を行い、主たるクラスターからかけ離れているデータを異常値、「ハズレ値」として分離することによって推定の精度を上げる方法が考えられる。この方法だと著観的な知見が得られなかったので最近比較的良く使用されている「自己組織化マップ」を使ってみた。理論的には1次元からn次元まで考えられるが、人間の直感を働かせることができる2次元を使って、何種類かのデータに適用させてトライをしてみた。ある程度視覚的にデータの位置関係が明らかになり、とくに「ハズレ値」が視覚的には明確になった。ただ自己組織化マップのパラメータを変化させたときの解について、パラメータと解との関係が十分に正解できなかった。自己組織化マップを分析道具として使いこなすためにはより一層の研究が必要であるという感想を抱いた。
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