本研究は、コンピュータ・シミュレーションを用いた構成論的アプローチを含む多面的な検討を通じて、組織内における規範の進化プロセスの解明を図るものである。フォロワーの自発性に焦点を当てながら、以下の3つのサブテーマに取り組んだ研究成果は、以下の通りである。 1. 内部通報についての構成論的研究 内部通報の企業での現状についてインタビュー調査を行い、組織成員間の相互参照関係の重要性が確認されたことを踏まえて、規範遵守の相互参照についてのシミュレーション・モデルを構築し、学会発表(1回)を行った。 2. リーダーの規範提示に対するフォロワーの受容についての構成論的・実証的研究 実証研究を進める領域として、近年話題になることが多い経営理念の浸透に対象を絞り、昨年度に引き続き質問紙調査を実施した。分析の結果、経営理念の浸透には、規範としての経営理念に対する共感が重要であることなど、浸透過程に関するいくつかの新しい知見が得ら、学会発表(1回)及び論文の公表(1本)を行った。さらに、フォロワーの自発性に基いた文言解釈の重要性に関する追加分析を行い、学会誌に論文を1本投稿中(審査中)である。 3. 自発性発揮にかかわるメタ規範についての理論的研究 自発性に関するメタ規範に関係する観点として、経営理念の制度化に注目し、上場企業に関する公表データをもとにした分析を実施し、著書(分担執筆)で発表した。
|