本年度は研究機関の最終年に当たる。昨年に引き続き米国の金融コングロマリットに特に重点を置き、その経営戦略、組織、リーダーシップの問題について事例研究を進めた。2010年7-8月には米国シカゴデポール大学金融学科に滞在し、現地の研究者との意見交換を深めた。また8月モントリオールで開催されたAcademy of Management世界大会に参加し、金融危機に関するセッション議論に参加するなどして、世界中からの研究者との意見交換を行うことができた。それらの成果をいくつかの学会や研究会で発表し、学会誌に掲載された。 100年に一度といわれる2008年に起きたサブプライム危機に端を発する世界的な金融コングロマリットの経営の問題の表面化は、本研究に絶好の事例研究の機会を与えた。とりわけ、金融界においては研究者による金融危機の実態解明が期待され、本研究のような金融危機を金融機関経営め側面からとらえた研究はわが国では皆無といえたため、金融実務家向けの週刊雑誌である「金融財政事情」では、16号にわたり、本研究の成果を分かりやすい形で実務家に発信することになった。 このように、サブプライム危機が発生する前に設定した研究テーマは、金融危機の発生とともに、なぜ世界の先端を走っているとみられた欧米の投資銀行が経営に失敗したのかという疑問を招き、当該分野での研究を進めるものが少なかったこともあって、学術的のみならず現実的にも意義の大きい研究テーマとなった。研究年度は終了したが、現在これまでの研究成果を単行本等でまとめるべく、検討中である。
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