■本研究の目的:米国大統領選挙を中心に米国政治選挙における対有権者市場開発訴求戦略技法としてのマーケティングの歴史的展開とその民主的含意を、歴史的資料および最新事例の分析を通じて実証的に解明する。 ■平成19年度研究実施計画の焦点(1):1970年代以降の米国政治におけるマーケティング史の文献調査(継続中) ○硬究成果(1)文献調査から、70年代以降のニクソン、レーガン、ブッシュ共和党政権とその選挙戦略におけるマーケティング利用は、有権者層化や有権者連合形成、メディアミックス戦略重視に特化していたことが明らかになった。(2)90年年代以降、共和党民主党ともにマーケティングの組織的体系的利用が急速に進展したこと、なかでもクリントン大統領図書館所蔵の政権内部メモの分析から、医療保険改革など同政権の重要政策の形成と推進において、マーケティングが体系的に組み込まれ、戦略組織化の要として機能したことが実証的に明らかになった。 ○成果の意義米国政治において90年代は、プロダクト開発からプロモーションまで一連の組織化された戦略としてのマーケティングが意識化され実践されることで、民主政治過程に構造的影響を与える歴史的分岐点になったこと、またそれは高度情報通信技術の進展が現代民主過程に与える構造的影響と不可分であることが示唆された。 ■平成19年度研究実施計画の焦点(2):2008年米国大統領選挙(予備選挙)のマーケティング事例分析(継続中) ○研究成果(1)2008年大統領選挙直前の米国民主政治における政治コミュニケーション環境、とくに報道と高度情報通信技術がもたらす環境条件を分析した。(2)2008年大統領選挙予備選挙の動向を、SWOT分析などマーケティングの視点から戦略的な分析を行った。 ○成果の意義2008年選挙は現職不在の厳しい競合条件と情報量の飛躍的拡大のもとで、有権者連合形成、プロダクトの差別化、確実な危機管理における各候補の組織的なマーケティングカの優劣をめぐる競争となっていることが例証された。
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