研究課題
ディクソン社(DSGI社)の家電小売流通に関する分析研究は、研究代表者が編集責任者を務めた著作『ヨーロッパのトップ小売業-その史的展開-』(同文舘、2008年)収録の論稿と、海外研究協力者との共同英文ケース・スタディ(昨年度論稿の改訂版)の発表という形で成果を公表した。ディクソンズ社の多国籍的・多チャネル的戦略を通じて顧客に価値を提供するという小売マーケティングの展開は、小売サイドにおける近代的マーケティング知識の蓄積と、中央ヨーロッパ統合を含む欧州統合下での小売展開の拡大という条件によってもたらされたものであった。この研究の過程で、ドイツのメディア=サターン・グループとの直接競合を避けるディクソンズ社の戦略的特徴が析出され、欧州家電流通の分析には、市場を二分する存在である両社の比較研究が不可欠であるという認識を得、研究代表者と海外研究協力者は、科学研究費補助金に対し、本計画を発展させた新たな計画の申請を行なった(幸いこの申請は採択された〔課題番号21530433〕)。わが国家電流通とディクソンズ社との比較については、研究代表者が、わが国で系列小売が登場した事情を戦前と戦後に分けて検討し、それぞれ英文論稿と英文サマリーとしてまとめ、異なる海外学会に提出した。前者はすでにレフリー審査をパスし5月に英国で報告予定であり、後者は現在レフリー審査中である。これらの研究でも、小売側での近代的小売経営の知識と能力の欠如による自立的チェーン・ストアの不十分性が、メーカーをして自ら系列小売店網を組織化させる動因となったという点が分析の基軸となっている。なお、以上の研究成果に加え、研究代表者は、2008年秋に英国出版社から英文単著を出版した。ここでは本研究過程で得られた研究成果の一部(企業者行動の暗黙知的展開や小売チャネル政策に関する基本的知見等)が利用されている。
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proceedings of the 2009 CHARM Conference, Leicester University, UK 14(5月刊行)
Case study prepared for discussion in University of Stirling MBA Retailing Programme
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