平成21年度の研究では、平成19年度から継続している文献・資料の収集とそれら既存研究の体系的な整理、ならびに平成20年度に実施したフィールド調査を通じて得られた客動線データの解析作業の2つを中心に研究活動を進めた。 1つ目の既存研究の体系的整理では、小売店舗内購買行動研究において客動線の解析に焦点を当てた研究の整理を行うとともに、関連分野として歩行者モデルの既存研究についても参照しつつ、現状の課題と今後の研究を進める上での方向性について論文にまとめ公表した(「店舗内購買行動研究における客動線分析の現状と課題」『流通情報』第41巻第6号6~18頁)。 2つ目の客動線データを用いた実証研究については、上記論文で指摘した課題の1つである客動線パターンの抽出とその変動に影響する要因の分析に取り組んだ。しかしながらこの実証分析作業については、平成21年度末時点では完了せず、現在も継続作業中である。この研究成果については、平成22年度中に論文にまとめ公表する予定である。 なお、既存研究の体系的整理を試みた上記論文において指摘していることであるけれども、買物客の店舗内購買行動の特性やその影響要因およびそれら相互の関連性について、これまでは必ずしも体系的に研究が蓄積されてきていない状況にある。そしてこのような状況を考慮すると、買物客の行動を記述する店舗内購買行動モデルを構築していく上では、その影響要因ならびにそれらの関連性について考察する基礎的研究を先行して行っていくことも当面の課題となることが改めて確認された。加えて、そのような影響要因とそれらの要因間の影響の構造の整理が不十分であるがゆえに、客動線データの分析手法についても体系化されたものが整備されるまでには至っていないという点も関連する課題として残されている。平成22年度の研究では特にこれらの課題に焦点を当て研究を行う予定である。
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