平成22年度の研究では、主に2つの実証研究を実施した。1つ目の研究は、客動線分析手法の体系的整理の一環として実施した客動線パターン分析に関する実証研究である(「店舗内購買行動理解と動線パターンの分析」『流通情報』第42巻第3号52~70頁)。本研究では、先行研究で提案された客動線分析手法を、小売店舗における観察調査で得られた客動線データに適用し、12種類の動線パターンを抽出するとともに、それらと顧客特性や客単価および動線長との関係を明らかにしている。本研究の分析結果は、消費者の店舗内空間行動には性質の異なる複数のタイプが存在することを示すものであり、店舗内空間行動モデルの拡張において、その多様性を考慮していくことが1つの方向であることを示唆しているという点で、重要な知見を提示するものとなっている。2つ目の研究は、小売店舗における買物客の年齢層が、来店行動および商品カテゴリーの購買行動に及ぼす影響を分析したものである(「食品スーパーにおけるアクティブシニアの購買行動」『流通情報』第42巻第5号32~45頁)。先の1つ目の研究の成果を踏まえ、本研究では買物客の年齢が、来店行動や購買行動に及ぼす影響を経験的に確認している。その結果、主に60歳以上のシニアにおける年齢の高まりが、商品カテゴリーの購買行動に正の影響を及ぼす場合と負の影響を及ぼす場合があることが確認された。この結果は、客動線パターンの多様性を生じさせるメカニズムを、各種商品カテゴリーの購買決定との関係で裏付け、店舗内購買行動の特性に関する理解を深める知見を提示しているという点で意義のあるものとなっている。
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