研究概要 |
ワン・ツー・ワン・マーケティングやCRMの実務では、顧客生涯価値(CLV)が重要な概念となっており、その推定のためにマーケティング・サイエンスの分野では様々な学術研究が行われている。本研究では、顧客の離脱が観測できない"Non-contractual(非契約型}"CRMにおいて購買行動データから顧客生涯価値(CLV)を個人別に推定するための消費者行動モデルを構築する。具体的には、ほとんどの企業が収集する顧客RFM購買データ(Recency,Frequency,and Monetary-value)から、離脱、購買頻度、購入金額という3つの相互依存した行動プロセスを個人別にモデル化し、将来の購買行動を予測することによってその顧客の生涯価値を導く。さらに、この3つの顧客行動プロセスを、それぞれ顧客特性と関連付けることによって、新規顧客獲得に対する有用な知見を導くことを目的とする。 それを踏まえて、今年度は、多数のブランドが存在し繰返し購買が観測される消費財市場における、消費者のブランド選択行動を再解釈し、消費者個人の内面にある絞り込まれたブランドの集合を考慮した選択モデルを構築し、実証を行った。具体的には、ID付きPOSデータをはじめとした観察(行動)データを分析するための理論的な枠組みの構築をめざした。消費者行動研究分野で提示されていた内部探索・外部探索・学習の概念を整理し、繰返し購買による動的な観察された購買行動を、消費者の情報処理の観点から再構築した。また、これまでの研究で概念として提示されていた考慮集合や処理集合といった消費者の内部に存在する集合は、直接質問するなどの能動的な手段でしか把握することができないが、経験集合という観察できる集合の概念を新たに提示し、実用的なモデルの構築を行った。 これらの作業に基づいて以下にある何本かの論文を英語と日本語で報告。また以下の学会に参加をし、研究の報告発表、そして他の研究者からの提案を得た。
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