研究概要 |
初年度は,ロジスティクスサービスプロバイダ)として,インテグレーター業を含む米国の航空会社の費用関数と合わせて推定した.そこから得られた成果は,旅客航空会社については原油価格高等のあおりで軒並み費用水準が上昇している一方,インテグレーター業は高いサービス水準を維持したままコストダウンに成功している,というものである.そしてこのようなインテグレーターの行動背景を垂直的差別化のモデルを用いて説明するという英文論文を作成中である.なお,2007年6月22日に予備段階の成果を米国カリフォルニア大学バークレー校で行われた世界航空輸送学会(ATRS)において報告した.その時の議論を反映させ,現在福山平成大学の浦西秀司氏とともに海外学術雑誌への投稿準備を進めている. また,インテグレーターの市場行動を分析する仮定で,あくまでインテグレーター化を行わない,低費用貨物専用航空会社が,フォワーダーの国際ロジスティクスシステムを支える役割を果たしていることが明らかとなった.企業戦略支援やソフトウエア開発など,高い水準のサービスを供給するインテグレーターとは異なり,比較的付加価値の低い貨物の荷主のロジスティクス活動をより迅速に,少ないフリルで安価に支援するためのシステムであり,丁度海運・空運選択の境界に位置する荷主層をターゲットとしたサービスであるといえる.小職はシンガポール国立大学のアンソニー・チン准教授とともに,フォワーダーの海運・空運選択行動を解明するため,離散型確率選択モデルを用いてフォワーダーの交通モード選択行動を明らかにすることを通じて,インテグレーター業に対抗する低費用国際ロジスティクス業の市場行動と,その行動がもたらす国民経済効果を本年度以降において明らかにする.既に,国内のフォワーダー業からインタビューの了解を得ており,行動経済学の成果を取り入れた質問表の作成準備中である.
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