研究概要 |
本研究の目的は,日本を中心としたアパレル産業の国際的な分業体制について現状を明らかにし,理論的な観点から学術的な成果を挙げ,また,日本のアパレル産業が抱える問題解決のための示唆を提供することである。 20年度の具体的な成果としては, これまでおこなってきた事例研究をまとめることであり,特に日本と韓国のアパレル製造業者の戦略の差異に関する分析に注力した。同じく東アジアの先進国であり,中国という大きなアパレル輸出国に隣接しながら,日本と韓国の中小アパレル製造業者のマーケティングのあり方は異なっていることがわかった。日本の中小アパレル製造業者の多くは,国際的な分業体制の中で事業システムを構築しており,高品質な製品を多様なチャネルを用いて販売するというマーケティングの特徴を持っていた。他方,韓国はソウルの東大門地域を中心として,国内的な生産体制をある程度維持しており,製品の販売も東大門商業集積を中心とした安定的なチャネルを利用しやすいが,製品は大手の業者よりも若干低い水準にとどまりやすい,というマーケティングの特徴をもつ,と考えられた。両国においては,この特性に基づいた政策の実施が求められる。 これらの成果は,8月にギリシャでおこなわれた学会(the 4th Annual International Symposium on Economic Theory, Policy and Applications)において,プロシーディングスと学会報告の形で報告し,示唆に富むコメントをもらうこともできた。今後は,やや調査が不足している韓国・東大門の追加調査をおこない,プロシーディングスとして発表した成果の質をより高めて,海外のジャーナルに投稿することを予定している。
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