本研究は、イノベーションや新製品がどのように普及していくのか、さらに、どのようにすればその普及を促進することができるのか、という問題について、消費者行動理論およびマーケティング分野への応用を主目的として考察を加えている。分析手法としては、システム・ダイナミックスおよびエージェントベース・モデルを中心としたコンピュータ・シミュレーションを採用し、その分析結果からイノベーション・新製品普及促進のためのマーケティング戦略などに関する提言をおこなっている。 より詳細には、われわれが今までに構築した、新製品普及過程を描写するシステム・ダイナミックスとエージェントベース・モデルの総括をおこない、両者の接合方法について理論的な説明をおこなっている。さらに、エージェントベース・モデルとネットワークモデルとの融合を検討し、様々なネットワーク構成におけるイノベーションおよび新製品の普及形態についての解明を行なっている。 今年度の主要な成果としては、システム・ダイナミックスとエージェントベース・モデルの特性の対比をおこない、購買者の認知的モデルの重要性を示した。さらに、「オピニオンリーダ」および「弱い紐帯」をモデル化した複雑ネットワークモデルの構築し、購買閾値、準拠集団、およびネットワークの構造に関する、モデルの感応度分をおこない、それらがイノベーション普及に果たす役割について数量的な分析をおこなった。 現在は、Webデータを活用した、イノベーション普及のテキストマイニング分析に着手しているが、実質的な分析結果の公開には至っていない。
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