本研究は製品開発、研究開発についての調査を経時的に行うことが目的であり、本年度は昨年度同様の調査を行った。「研究開発についての調査」については、419社に発送し132社からの回答を得た(回答率31.5%)。同様に「製品開発についての調査」については、646社に発送し124社からの回答を得た(回答率19.2%)。両調査について、昨年度調査との比較を行った。 さらに研究開発については、オープン・イノベーションの規定要因についての分析を行い、技術変化、吸収能力、技術資源が正、開発子会社、外部技術への抵抗が負の影響があること、さらにオープン・イノベーションの成果が高いほど、R&Dの成果も高いことがわかった。 製品開発については、ユーザーイノベーションの規定要因について、von Hippel (1994)の情報粘着性理論に基づいて、情報の量、情報の暗黙性、送り手の能力、受け手の能力、ツールキット、コミュニティ、ユーザーへの情報提供に注目して仮説を設定した。構造分析モデルによって仮説を検定した結果、ユーザーの問題解決能力は、ユーザーイノベーションの発生に正の相関があったが、メーカーの問題解決能力、ニーズ吸収能力、ニーズ/ソリューション情報の暗黙性や開発に必要な情報の量は有意とはならなかった。さらに、ユーザーへの情報の提供、コミュニティは、ユーザーの問題解決能力、情報発信能力を向上させることがわかった。来年度以降は本年度と同じ調査方法で継続することによって、時系列での比較という視点からの分析も行う予定である。
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