本研究は製品開発、研究開発についての調査を経時的に行うことが目的であり、本年度は2007-9年度同様、「研究開発についての調査」「製品開発についての調査」を行った。 研究開発については、オープン・イノベーションの規定要因についての分析を行い、内部吸収型のオープン・イノベーションと外部提供型のオープン・イノベーションでは、規定要因が異なることを明らかにした。 製品開発については、ユーザーイノベーション発生の規定要因について、von Hippel(1994)の情報粘着性理論に基づいて、情報の量、情報の暗黙性、送り手の能力、受け手の能力、ツールキット、コミュニティ、ユーザーへの情報提供に注目して仮説を設定した。構造方程式モデルによって仮説を検定した結果、ユーザーの問題解決能力は、ユーザーイノベーションの発生に正の相関があったが、メーカーの問題解決能力、ニーズ吸収能力、ニーズ/ソリューション情報の暗黙性や開発に必要な情報の量は有意とはならなかった。さらに、ユーザーへの情報の提供、コミュニティは、ユーザーの問題解決能力、情報発信能力を向上させることがわかった。
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