研究概要 |
本研究は製品開発、研究開発についての調査を経時的に行うことが目的であり、本年度は2007-9年度同様二つの調査を行った。 まず、「研究開発についての調査」に関しては、300項目を設定した。それらのうち、2007年からの4年間でトレンド変数が有意となったのは41項目であった。4年間ともに回答した企業は4社であったにも関わらず,安定した結果となったのは,本調査の結果が日本企業に共通する傾向であることを示唆している。一方、変化した項目からは,「技術的優位性維持の困難化」「子会社の活用による研究開発の半オープン化」「研究開発におけるリーダーの弱体化」「研究開発の縮小と困難化」「研究開発の成果の有効性の低下」「自社の技術的・製品開発における強みの喪失」「など研究開発が極めて苦しい状況にあることがわかった。 「製品開発についての調査」に関しては、同様に250項目中、30項目についてトレンド変数が有意となった。変化した項目からは,「売上などの成長鈍化」「特許など技術優位性の低下」「社内での公募の減少」「自社の技術的な強みの低下」「開発プロセスの公式化」「社内での情報共有、一貫性の後退」「ユーザーとの関係の希薄化」などの問題が重要化していることがわかった。 このように、研究開発、製品開発ともに日本企業は売上の低下や競争の激化、組織内でのリーダーの弱体化、研究開発や製品開発の効率や強みの低下といった問題を抱えていることが明らかとなった。 なお、本年度は、ラディカル・イノベーションに関する項目も設定した。自己評価ではあるが、半数以上の企業が3年以内にラディカル・イノベーションを導入したことがある。ただし、先端的な技術を導入したものであり、顧客や競合の不確実性が高いため、必ずしも成果には結びついていないことがわかった。
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