本研究の目的は、東アジアにおける物流改革の現状を分析し、問題点を明確にすることにある。その上で、日本型物流モデルの影響や活用の実態を検討しその発展の条件や課題を明らかにすることである。20年度の取り組みとして、主に香港、深馴そして台湾を中心に物流改革の実態調査を実施した。調査の対象は、日系物流企業、現地物流企業、電子部品製造企業、金属加工製造企業、高雄港湾施設(台湾交通部高雄港務局)、宅配企業、外資系小売企業などへの視察とヒアリングを内容としている。これによって明らかになった点は、東アジアでの物流問題の背景にはマクロ的にはインフラ整備推進の問題が存在しており、香港、中国深〓、台湾のそれぞれエリアの地理的条件や事業環境は異なっているが、ミクロ的に共通して見られる特徴は物流活動に対するコストとスピード面からの改革が大きな課題となっていることであった。特に日系企業では、顧客サービス向上と物流コスト削減というトレードオフを克服しながら、日本とほぼ同じ内容の物流サービスを提供する方向での良好な関係構築を図る取り組みをしており、日本の高質なサービスを訴求した形で急成長している台湾の統一速達や香港の山九のケースから日本型の有効性が確認できたが、これはユーザー環境、取引慣行・生活習慣やインフラ条件の違いによって求める水準が一様ではない。また、小売企業の国内のみならず、国際的な店舗展開による販売力増大が生み出すバイイングパワーがSPA業態を含め、SCMの高度化に取り組んでいる実態が確認できた。各企業や機関にとって、国際的な競争拡大と近年の世界的な大不況の影響の中でますますコストとスピードをテーマに物流改革の戦略的推進が重要視さてれていることが浮き彫りにされている。
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