研究概要 |
本研究は,ラグジュアリなモノの構成概念を明らかにした。これまでは,ジンメル(1919)がトリクル・ダウン理論を用いて議論したとおり,一般の人々にとってラグジュアリなモノは富裕層が持つラグジュアリなモノを世俗化してしまっていると言われてきた。確かに,ラグジュアリな所有物は高価であり,その機能は他者への顕示でありステイタスである。アメリカと日本とイタリアで調査を行った。アメリカは,ニューヨークの市内と郊外に住む主婦を対象とした。日本では,東京に住む主婦を対象とした。イタリアは,フィレンツェの貴族を含む裕福な人々を対象とした。用いた方法論はビデオグラフィーである。ビデオグラフィーとは,ビデオを用いてデプス・インタビューと参与観察を行い,オーディオのみならずビジュアルのデータも分析し,ビデオ編集して研究成果を発表する新しい方法論である。ビデオグラフィーを通じて,我々は,ラグジュアリなモノの意味を明らかにし,日米の異なった文化の共通点を見つけた。一般の人々にとって,ラグジュアリなモノは,希少性があり,他者への顕示に用いられ,現実からの逃避となり,自己アイデンティティを強化するものであった。イタリアの富裕層は,これらいずれのファクターもラグジュアリなモノに見出していなかった。なぜならば,彼女たちはモノに頼らなくても,自身の家柄や伝統や何代も続くファミリービジネスによってアイデンティティを構築できていたからである。
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