研究概要 |
長引くデフレ不況からようやく抜け出し,日本企業はその競争力を取り戻しつつある。このような状況下で,従来の経営者主導型の経営から株主重視型の経営への転換が行われた。事業活動が株主利益を重視したものになっているかどうかをチェックするために,日本企業のコーポレート・ガバナンスの仕組みは強化されてきている。 特に,企業内部のコントロール・システムとして経営者報酬契約に関して少なからず改善がみられるようになっている。東京証券取引所は「コーポレート・ガバナンス報告書」の提出を制度化しており,そこに経営者報酬に関する取り組みが記入されるようになった。本研究では,企業内におけるコントロール・システムとして経営者報酬契約がどのような役割を果たし,その契約において会計情報がどのようにかかわっているかを調査しようとしている。今年度は,研究初年度であり,「コーポレート・ガバナンス報告書」の収集に努め,企業がどのような経営者報酬の体系をとっているかを分析している。株価ベースの報酬の比重が増えていること,また企業業績との連動性が曖昧な役員退職慰労金が廃止されていることが特徴になっている。 また,取締役会のスリム化が進み,その構造が大きく変化してきていることが指摘されている。本年度は,今後の統計的な分析を行う前段階として,『役員四季報』(東洋経済)をもとに,取締役会の構造のデータ・ベース化にとりかかっている。 経営者報酬と会計情報との関係については,国内ならびに海外の文献を中心に、どのような関連性があるのかを調査している。特に,予想利益は経営者報酬での利用も確認されており,わが国の予想利益がどのような特性をもっているかについて実証的な調査を行った。
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