初年度は、域内共通市場の形成と「IAS規則」の受入れまで遡り、昨今のEU会計戦略の劇的な変化と受入れ後の評価を、EU域内の会計基準統合化と欧州企業の視点を取り入れて行うことを目的とした。しかし、昨今の会計基準共通化の変化は著しく、EUの米国市場におけるEU基準(EU版IFRS)は、SECの動向(例えば、差異調整表撤廃)に左右されるため、相互承認戦略に与える変化は米国(SEC)の対応に多分に影響される状況である。本研究の視点(分析の立ち位置)はEU域内にあるため、本年度は、EU報告書の渉猟と、拡大EU諸国および早期参入国の企業分布を調査した。しかし、追加採択であったため、時間的に制限があり、これらをEUの会計政策の理論的分析に繋げる段階には至らなかった。 また、CESR(欧州証券規制当局委員会)が2007年12月に公表した『助言案』は、EU域内市場で使用される第3国会計基準についての調査を公表し、そのなかで、28種類の会計基準の乱立を指摘している。その多くは、EU域内資本市場で資金調達する新興経済圏諸国の会計基準である。CESRはとくに、インド、韓国、中国、ロシアといった新興国の基準を「EU域内では最も有力な会計基準」と認識している。さらに、IASB(国際会計基準委員会)は、SME版IFRSの公開草案のコメント受付を終了したところである。今後、非上場企業のIFRS融和がどのように進行するかは、EU域内後発参入国、域内上場非EU加盟・新興国、IASBの動向が複雑に絡む基準統合化となりそうであり、観察の余地がある。
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