スイスは政治的にはEU非加盟国でありながら、経済的にばEUとの相互通商協定により、実質的に同一歩調をとっている。法制度的には大陸法国家の範畴に分類されながらも、規定内容については隣国ドイツに比べかなり穏やかな特徴を有している。その理由は、スイス連邦の成立以来、今日に至るまで、直接民主制に影響され、国民に認められたイニシアティブ(国民・住民発議権)とレファレンダム(国民・住民投票権)の二つの権利およびカントン(州:現26州)やゲマインデ(各都市)に多少なりとも認められている権利が存在するため、簡単には法改正できないというスイス独自の特質から来ているといえる。 以上の背景を基に、本研究では、会計制度面に焦点を絞り、現行法の枠組みとりわけ、連邦債務法(OR)を中心として、1984年以来「スイス会計士協会」の主導の下で進められている会計報告基準(FER)、RRG(新会計法案)、スイス監査ハンドブック(HWP)といった法令(案)とスイスSWX証券取引所基準との制度上関係を明らかにし、スイス会計制度の内的特性を明らかにすることが目的である。また、最近取り上げられつつある中小企業政策における会計制度面での役割について、スイスの場合は多くの中堅・中小企業が経済を支えており、わが国における今後の中小企業対策に有用性を有すると考える。その意味で今回の研究に日本で本格的に取り組んでいる研究は稀であり、重要在があると判断している。 今年度の研究では、H19年7月に在日スイス大使館で、研究趣旨説明と、研究方法についてのアドバイスを受けるため、スイス商務官を交えた意見交換を行なった。その際、当初予定した次年度以降のアンケート調査については予算・調査対象等で困難な状況が判明し、まずはスイス本国での関連情報収集が重要とのアドバイスを受け、スケウールの都合上3月末に現地での情報収集にあたった。今回は情報の一部を入手した段階であるが、その成果の一部は今後公表する予定である。
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