研究課題/領域番号 |
19530412
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
青木 茂男 青山学院大学, 会計プロフェッション研究科, 教授 (50129061)
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研究分担者 |
青淵 正幸 立教大学, 経営学部, 准教授 (00290130)
中嶋 教夫 明星大学, 経済学部, 講師 (90409425)
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キーワード | 企業価値 / 株主価値 / 日米比較 / モンテカルロ / DCF法 / 利益調整行動 / 安定配当性向 / リアル・オプション |
研究概要 |
企業価値創出と株主価値を多角的に研究した。青木は企業価値創出の根源である収益力の日米比較を行った。日本の大企業は外部委託生産が多いために売上高が膨らんでおり、表面的には売上高総利益率が低く見えるが、実際は誤りであり、売上高付加価値率などから推定すると、日本の売上高総利益率は米国と同じであり、使用資産回転率の低さ、すなわち、資産効率が悪いことが米国に較べて収益性が低い原因であることが明らかになった。 青淵はわが国における株主価値について3つの視点から研究を行った。(1)株式新規公開(IPO)企業における利益調整行動。企業価値創出を目指すIPO企業経営者は、上場後初の決算数値と直近の予測値との乖離による市場における信頼性の逸失を防ぐため、わずかに予測値を上回るような利益調整を行っていることが確認された。(2)実質無借金経営企業に対する市場の評価。回帰分析の結果、株価は株主価値を適正に示していることが確認された。(3)企業の増配アナウンスが株価に与える影響。増配アナウンス直後の短期間では、安定配当額政策企業の累積超過収益率(CAR)が安定配当性向政策企業のそれを上回るが、2週間程度でCARは増配アナウンス10日前の水準に戻る。一方、安定配当性向政策企業のCARは増配アナウンス以前より上昇傾向にあり、この企業の増配アナウンスは株主価値の増大に寄与している。 中嶋は、DCFモデルなど無限流列を活用したモデルにはキャッシュフローの予測等に不確実性の問題があるとの視点から、モンテカルロシュミレーションやリアル・オプションの適用を研究した。その結果、リアル・オプションモデルには、企業の将来の意思決定や不確実性の価値算定を可能にするので、従来の無限流列モデルよりも、より詳細な企業評価を行うことができる可能性があることが判明した。ただし、オプションをどのように認識するかという点の問題が残る。今後は、実証研究によるデータの判断が積み重ねられていく必要がある。
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