IAS22を改正したIFRS3が2004年3月に公表され、持分プーリング法も限定付で容認したIAS22とは異なり、パーチェス法強制適用法を選択した。その際、対等合併のように結合当事企業のいずれが支配を獲得したのか明確でない企業結合に対して、「フレッシュ・スタート法」(公正価値プーリング法)の適用可能性が論じられている。フレッシュ・スタート法は、取得企業・被取得企業双方の資産・負債を公正価値で再評価・合算する方法である。結合後企業の資産・負債が統一的に公正価値で評価されるので、目的適合的な会計情報が財務諸表利用者に対して提供でき、結合後の経営者にとっても、新規企業創立後の資源に対する新しい会計責任を明確に示すことができる。フレッシュ・スタート法の理論的妥当性は、極めて大きい。 ただし、2008年1月に改訂されたIFRS3においても、フレッシュ・スタート法は基準化されることはなかった。フレッシュ・スタート法の理論的妥当性が論及されるに止まり、制度化されるに至っていない。しかし、パーチェス法では、被取得企業の資産・負債は公正価値で評価されるのであるから、取得企業による再評価も実践可能のはずであり、フレッシュ・スタート法(公正価値パーチェス法)の実務的適用可能性は低いとは言い難い。 平成20年度にも、企業結合会計に関する内外の資料を収集した。平成20年12月3日には京都大学の藤井秀樹教授との情報・意見の交換および討論を行い、平成21年3月16日から21日まで英国を訪問し、イングランド・ウェールズ勅許会計士協会(ICAEW)の図書館等で最新のデータ等を収集してきた。今後の業績作成に役立てるつもりである。
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