本年度は、研究の初年度として、研究テーマに関わる統計資料や歴史的文献の収集を行うと同時に、山形県庄内地方鶴岡市と愛媛県南予地方内子町を対象地とする現地調査を実施した。その結果、以下のことが明らかにされた。 ◇山形県庄内地方について 1)歴史的資料から、明治民法施行以前は、姉家督慣行が広く見られる地域であることが明らかにされた。 2)現在も農村では、三世代・四世代同居の直系家族がほとんどである。 3)明治民法施行後は、長男相続が多いが、姉婿養子も多い。 4)近年は、後継者の配偶者不足や高齢者世帯の増加のため、イエの存続が不安定になっている。 5)米価の暴落と農外労働市場の変化により、稲作農家の経営危機が深刻化している。 6)直売所や有機農業に取り組む農家もでてきたが、農協に全く出荷しない農家はまだ例外的である。 ◇愛媛県南予地方について 1)歴史的資料から、隠居別居慣行が広く見られる地域であることが明らかにされた。 2)平場農村と異なり、稲作は自給的で、タバコや畜産、野菜作、炭焼きが伝統的に行われていた。 3)通勤兼業化地帯とはいえず、農家世帯の現象、高齢化世帯の増加が顕著である。 4)山村部では、耕作放棄地もかなり見られる。 5)直売所や有機農業に取り組む農家もある。
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