本研究の目的は、日本の農山村地域での聞き取り調査をとおして、庶民の生活実態としての「家」について考察することである。西日本や東日本の調査から、今日の農村では、山間部を中心に、過疎化と高齢化が進行しており、世代を越えての連続が難しくなっている現状が明らかになった。だが、稲作中心の平野部では、一子単独相続によって家産と家業と家名を超世代的に継承する「家」が広範に分布する。三世代・四世代の同居世帯の農家が多い山形県庄内地方の事例研究から、「家」が存続するための今日的条件として、(1)安定した農業収入が得られる基盤があること及び(2)通勤兼業が可能であることという2つの地域的条件が示された。
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