研究概要 |
本研究の課題は,日本・中国・韓国・台湾の中規模の自動車部品製造企業を対象に,企業の雇用管理の内実と労働者の職業能力の実態を調査することを通じて,各国の中小企業の人材形成の特質を類型化するとともに,成長の見込まれる雇用管理と職業能力のパターンを析出し,今後求められる労働市場政策および職業能力開発政策の展開に必要な方法論を提起することである。具体的には,企業調査と労働者調査に基づき、次のような仮説を検証しようとするものである。(A)東アジアにおいて,働く人の職業能力形成と中小企業の雇用管理との組み合わせには幾つかの類型が想定できる,(B)働く人の職業能力を向上し得る雇用管理の下において,中小企業の成長が最も見込まれる,(C)中小企業に対する政策的な支援の重点は,働く人の職業能力の向上に置かれるべきである。 平成19年度は,企業調査を中心に,地域クラスター・地域雇用の実態を補完的に調査した。日本は本田技研工業,韓国は現代自動車,中国は吉利集団および現地進出の起亜自動車,台湾は現地進出の日本のメーカに,それぞれ部品を供給している企業を主な対象として調査を進めた。垂直的分業の程度を考慮し,主として日本と韓国の場合は2次サプライヤー,中国と台湾の場合は1次サプライヤーを調査した。当該企業の所有関係と雇用管理の性格を勘案し,従業員の採用と育成において,それを血縁・地縁など縁故に依存するタイプと,外部からの人材の獲得に力を入れるタイプ,そして自ら人材の育成に力を注ぐタイプに分けて調査を進めた。主な調査項目としては,現在の経営実績と,いままでの成長プロセスをふまえたうえで,採用・教育訓練・昇進・退職管理の実態と,雇用管理の土台となる人事制度および雇用管理と密接に関連する賃金管理について調べた。
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