本研究の課題は、日本・中国・韓国・台湾の中規模の自動車部品製造企業を対象に、企業の雇用管理の内実と労働者の職業能力の実態を調査することを通じて、各国の中小企業の人材形成の特質を類型化するとともに、成長の見込まれる雇用管理と職業能力のパターンを析出し、今後求められる労働市場政策および職業能力開発政策の展開に必要な方法論を提起することである。具体的には、企業調査と労働者調査に基づき、次のような仮説を検証しようとするものである。(A)東アジアにおいて、働く人の職業能力形成と中小企業の雇用管理との組み合わせには幾つかの類型が想定できる、(B)働く人の職業能力を向上し得る雇用管理の下において、中小企業の成長が最も見込まれる、(C)中小企業に対する政策的な支援の重点は、働く人の職業能力の向上に置かれるべきである。 平成20年度は、労働者調査を重点的に行った。本田技研および現代自動車グループのサプライヤー企業に勤めている一般労働者と現場監督職および中間管理職を対象に、(A)その属性と現在の状況、(B)職業訓練の経験、(C)出身地を含めた地域間移動の情報、(D)転職の頻度と職ごとめ在職期間などを調べた。それから、その職業能力形成が、(イ)一般教育、(ロ)Off-JTによる職業教育、(ハ)企業のなかでの実務経験め獲得、(ニ)企業間の移動による実務経験の獲得のうち、主としてどちらに依存しているか、そして、その能力形成と働く人のキャリアとはどのようにかかわっているかを観察した。なお、職業能力開発に関してどのような公的支援が必要とされているかを検討した。
|