平成20年度の研究では、前年度の研究に引き続き、阪神淡路大震災以降に活動展開している神戸のボランティア活動を対象に研究を遂行した。従来から進めてきているボランティア活動の社会学的記録については、特定非営利活動法人拓人こうべ、阪神高齢者障害者支援ネットワーク、被災地NGO協働センターの三団体のヒアリングを夏期と春期に計画、実施した(拓人こうべは先方の急な事情により結果的に夏期のみの調査となった)。 拓人こうべは障害者自立支援法以降、組織形態の大幅な変更が生じている実態がある。この団体は「アメーバ的」と称されるように状況に応じて幾度か組織形態の変更を行っており、ここに注目して更なる分析を進めていく必要がある。阪神高齢者障害者支援ネットワークは近年では「地域」をキーワードに活動展開をしている。これまでの調査で聴き取ってきた「生活の全体を捉える」 「人として」といった活動理念に関する表現群と「地域」というキーワードとの結びつきを捉えていく必要があろう。被災地NGO協働センターは、神戸での支援活動は終了しているものの、阪神淡路大震災後の能登や中越の地震の被災者支援活動を実施、継続している。そして、これらの災害ボランティア活動の実体験から、市民社会創成の必要性を一貫して説いており、こうした実践と理念との結びつきを考えていく必要がある。 本研究ではこれらの活動内容を、組織編成とのありかたでまとめていくことが課題となるが、このために必要となる理論的課題の検討のため、前年度に引き続き専門家を招聘してレクチャーを受けた(天田城介氏「社会学的実践論・当事者論」、成元哲氏「地域とvulnerable group」、下田正弘氏「聴く」)。
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