平成21年度の研究では、神戸のボランティア活動を対象とした社会学的記録を継続するため、被災地NGO恊働センター、特定非営利活動法人拓人こうべ、阪神高齢者障害者支援ネットワークの三団体のリーダーにヒアリングを行った。各団体それぞれ別様の組織展開を示しているが、その時々の対象者ニーズに合わせた活動実態、社会情勢に即した組織改編を行いつつ、活動を継続させている点が特徴的である。 阪神高齢者障害者支援ネットワークの活動は現在では「地域」を核に据えて進められているが、そこには人々の多くが本来的に地域における人間関係の上に生活を成り立たせていることへのこだわりが背景として存在している。人間関係の重要性は、特に高齢者や障害者をはじめとした困難を抱える人々になれば一層増してくる。この関係性から切り離されることこそが「<生>の孤独化」であり、「孤独死」の原因である。こうした考えに基づいて復興住宅の空き家を利用したミニデイサービスの活動を増やそうとしているが、行政側の公営住宅管理の論理に阻まれ、まだ拠点拡大には至っていない。ここに見られるのは、理念に沿った活動とそれに伴う組織編成という流れであり、従来のNPO論等に見られる存続のための合理的組織編成論ではない。なお、他の二団体においても、同様の観点から組織編成のあり方を理念や活動から説明していくまとめを試みている最中である。 本研究では、ボランティア団体の活動内容を組織編成とのありかたでまとめていくことを課題としているが、このために必要となる理論的課題の検討のため、平成21年度は福永真弓氏に「多声性の環境倫理」のレクチャーを受け、「聴くこと」が有する意味の重要性を確認した。
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