今年度は、昨年度おこなったインターネットによるライフヒストリー調査のデータ分析とともに、調査方法の課題について検討した。 まず調査方法の検討について、インターネットを用いたライフヒストリー調査の利点は、コストを最小化しつつ、理論的な誤りを減少させることができるという点であった。この点について、今回の研究において、インターネット利用の有効性を確かめることができた。ただ今回の調査ではカレンダー形式の調査を実施することができなかったため、ライフイベント間の関連を回答者が把握することが難しく、それゆえ回答者に回答を難しくし、回収率を下げる結果となった。またライフヒストリー調査は、個人的な情報を詳細に尋ね、また回顧してもらうため、近年の調査環境の悪化を考慮すると、今後さらに回答しやすい、過去の出来事を想起しやすい調査手法の開発が望まれる。 一方今回のデータの分析からは、夫婦間の関連の強さと弱さを明らかにすることができた。ライフイベントの影響は夫婦(男女)によって大きく異なっていたが、人生の転機については夫婦で一致する度合いが高く、主観レベルでの夫婦の類似性が見られた。一方、夫婦間の関連の弱さについては、意識面でのずれが見られた。夫婦間のサポート、家事に関する主観的評価については夫婦の間で大きくずれていた。こうした分析は夫婦ペアのデータを得ることによってはじめて可能であり、この点において本研究には大きな意義があると考えられる。ただパイロット調査であるため、結果の一般化は難しく、今後サンプリング調査をおこなっていく必要がある。
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