認知症高齢者の介護において近年注目されているのが「地域」である。在宅か施設かという二者択一ではなく、高齢者がそれまでともに暮らしてきたなじみのある人々となじみのある空間で暮らしていける場としての「地域」が重要となってきた。「介護予防」や「地域密着型サービス」など介護保険法の改正のたびに出てくる用語は、介護保険の制度としての持続にとっても今後地域が重要な役割を果たしていくこと示唆している。とりわけ認知症高齢者が「住みなれた地域」で暮らし続けるためには、家族だけでなく地域全体のサポートがぜひとも必要になる。すなわち、認知症高齢者が地域の中で自分らしく暮らしていくためには「地域」のなかに、そうした人たちを支えるその地域固有の仕組みやサービスがなくてはならない。地域における認知症介護はそれぞれの地域固有の人材、組織、活動、及びそれらの連携によって実現する。 本研究では、認知症介護を実現している地域を選んで調査を行い、それぞれの地域における認知症高齢者の介護の特徴を明らかにした。調査をとおして、次の4点が明らかになった。 (1)地域のなかに、認知症高齢者が安心して集うことの出来る集団がなくてはならないこと。その集団のなかに自分の役割があって、何か自分が誰かの役に立っているという実感が得られること。 (2)認知症介護の事業所が、地域住民にたいして、認知症の理解と支援方法の学習について、積極的な役割を果たしていること。介護事業所が地域住民の「認知症介護よろず相談」になっている場合も多い。 (3)行政、介護事業者、地域住民この3者の連携が必要であること。 (4)認知症介護について、介護保険ではカバーしきれないサービスを提供する何らかの仕組み、活動が組織化されている地域では、地域で住み続けることがより容易になる。
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