本年度は、主として豊田市の地域住民を対象とした質問紙調査を実施し、その集計と分析をおこない、年度末に研究成果報告書を刊行した。旧市域に住む30-69歳の男女を(確率比例抽出法により)無作為に抽出し、郵送法により質問紙3000票を配布・回収し、有効回答率51.1%を得た。近年の調査研究ではおこなわれていなかった質問紙調査を比較的大きな規模で実施でき、郵送法としてはかなり高い回収率を上げられたことは大きな成果であった。 分析の結果、トヨタ自動車従業員をはじめとする自動車関連産業従事者たちは、通説と異なり、仕事や生活への満足度が高いことが明らかになった。また職住が近接した状況のもとで定住化がすすんでおり、地域に埋め込まれた社会的紐帯が形成されているために、彼らは市民活動の参加にも相対的に熱心であることが明らかになった。またそこでは、地域的紐帯の強さと、郊外地区の都市インフラの不充足を背景に、とくに「地縁的な」まちづくり活動の参加がさかんであることが示された。全体として、旧・新住民を中心に選択的に地域的凝集性が強まり、地域コミュニティの形成が進んでいることが実証された。これまでの通説とはまったく異なる知見が実証され、非常に大きな成果が得られたと言える。年度末に分析結果をまとめた研究成果報告書(全246頁)を刊行したが、今後もさらに検討を続け、順次関連学会と学術誌に成果を発表していく予定である。なお、集計結果の一部は研究室HPで公開し、調査対象者と社会への還元をはかっている。
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