本年度、下記の4点で、当初計画を達成しえた。1、帝国主義からポスト・コロニアルへの歴史的な社会変動の渦中で、中国に取り残された残留日本人孤児の生活史・誌を、インテンシブな面接聞き取り調査に基づいて分析・考察し、その結果を、論文「中国残留孤児の『戦争被害』」、および「ポスト・コロニアル中国における残留日本人孤児」(2009年4月刊行予定)としてまとめた。また編著書『京阪神都市圏の重層的なりたち』の中で「中国残留孤児の移動とナショナル・アイデンティティ」を執筆した。2、中国残留日本人の生活に関する新たな調査を実施し、その成果もふまえ、論文「激動の六年余、道は半ば」、および『中国「残留日本人孤児」の生活の現状と新たな支援策に関する調査報告書』を刊行した。3、既収集の第1次資料の翻訳作業を完了し、次年度研究の進展のための基礎を固めた。4、中国の先行研究の批判的検討作業を進め、特に関亜新・張志坤著『中国残留日本人孤児に関する調査と研究』の全訳書を刊行した。さらに同書の「訳者あとがき」において、先行研究の到達点と課題を明らかにした。 また本年度、当初計画以上に、下記の3点で成果をあげることができた。1、論文「血と国-中国残留日本人孤児の肉親搜し」(2009年9月刊行予定)を執筆・入稿し、ポスト・コロニアルの中国における残留日本人孤児の動向を、新たな視点から分析・考察した。2、論文「中国残留孤児問題は解决したか」(2009年4月刊行予定)執筆・入稿し、残留孤児やその二世の生活実態について明らかにした。3、次年度の二世・三世に関する実態調査に向け、予備調査を実施した。
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