1.マニラで開催のフィリピン日系人会連合会に講演者として参加の2007年5月、2世〜4世の日系人約20人にインタビューし、彼らの市民権、アイテンティティの推移などについて調査。この際、フィリピン日系人会連合会会長、在京のNPO・フィリピン日系人リーガルサポートセンター弁護士らキーインフォーマントと長時間、面談し、残留二世の「就籍」の現状、市民権の変化などについて聞き取った。 2.上記の研究成果は、豪州アジア学会発行の学術誌『Asian Studies Review』に論文を寄稿・掲載したほか、同年11月の日本人移民・日系人に関するフィリピン大学での国際シンポジウムで発表した。ここでは、世界の日系人社会で極めて特異な「世代格上げ」(法律上、二世が一世に、三世が二世になる)運動の実相、背景を分析し、「日系人」が「日本人」になることの意義などを論じた(「研究発表」の欄参照)。 3.インドネシア日系人については、ジャカルタと東部ジャワ地方で一世と二世10数人にインタビューし彼らのアイデンティティ、市民権などを調査した。この結果、一世が現地帰化に伴って法的に二世になる「世代格下げ」が起き、日本就労を希望する三世の間で「日系人認定」を求める様々な動きが起きていることが判明した。また、中国からの日系人については、旧満州で発行の雑誌『宣撫月報』(復刻版)を購入して精読し、日本人移民一世の満州入植の問題点などの解明に努めた。 4.アジア地域日系人をテーマとする研究者のネットワーク作りを兼ねて、2008年1月にアジア太平洋日系人のアイデンティティと市民権に関するワークショップ(「学会発表」の欄参照)を開催した。ここで築いた研究者ネットワークは、インドネシア日系人の現地共同調査(2008年3月)、「帰還」日系人対象のアイデンティティ調査票作成会合(同年4年、上智大で開催)などで生かされつつある。
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