1本研究は人間の死についての長期的な研究の一部であり、「自然葬」運動の社会的・文化的意味空間を社会学的視点から解明することをねらいとし、初年度は次のような計画を立てた。 (1)日本の墓制の実態調査ならびに墓制に関する文献研究とテキスト分析を進める。 (2)NPO法人「葬送の自由をすすめる会」の会員誌のテキスト分析を進め、会員の死生観、他界観念を明らかにする。 (3)NPO法人の全国各支部で開催されるシンポジウムや交流会に参加し、その発話を記録分析する(3年間継続)。 '2この計画の下に達成され、明らかになったことは以下のとおりである。 (1)古い形態が残るといわれる沖縄県内の4島において墓制の実態調査を実施し、本土のものとはかなり伝統が異なることが確認できたが、火葬施設や搬送体制の整備等に伴って「本土化」が進行中であることが明らかとなった。また御嶽の調査も行い、その結果、墓制と御嶽信仰が密接に結びついている可能性があり、今後さらに分析を進める予定である。 (2)会員誌のテキスト分析を進め、会員の他界観が同じNPO法人の会員であるにもかかわらず、多様であると同時にいくつかの型に分類可能であることが次第に明らかとなってきた。 (3)シンポジウムや交流会の参与観察からは特筆するような成果は得られなかったが、自然葬の立会いの場で参与観察を実施し、他界の語られ方についてのいくつかの知見を得た。
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