本研究は、札幌市の、出生・婚姻関係、進学学歴、就業関係などの時系列・年齢別・地域別(札幌市及び他の政令指定都市)データを収集・分析するとともに、他の政令指定都市との比較も踏まえ、少子化の要因とそのメカニズムの解明を行い、因果関係を組み込んだシミュレーションモデルを構築することを目指している。2007度は日本の政令指定都市間の比較を通じ札幌市の少子化の人口学的特徴について考察した。その結果、2005年国勢調査と人口動態調査から性比と女子の未婚初婚率の間に強い正の相関が見られること、札幌市では20-24歳、25-29歳における男女の人口移動率格差が性比の低下を招き、これが女子の未婚初婚率を低く抑えること、さらに男女の未婚初婚率格差として30-34歳以上の未婚性比のアンバンラスにつながり、30-34歳以上の女子の未婚初婚率を低水準に留め、結果的に晩婚化によるキャッチアップを妨げている可能性があることがわかり、その成果を2008年6月の日本人口が報告し多大な反響を得た。そこで今年度は両者の関係をシミュレーションモデル化するため、この点について時系列的分析を行い、1950年から2005年までの国勢調査の性・年齢5歳階級別人口を用いてセンサス間の性・年齢5歳階級別純移動率と各年次における性比を求め、以下、3点の知見を得た。1)純移動率から時系列的に性比を予測しうる。2)純移動率の主要な要因は大学進学移動と大卒後の就業移動3)20-24歳、25-29歳の性比と女子コーホートの未婚初婚率の間には明確な時系列相関がある(2009年6月人口学会大会にて報告予定)。
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