研究概要 |
本年度は研究最終年度のため,主としてこれまでの調査をまとめるためのデータ整理や補充調査に力を注いだ。特にアンケート調査のデータを分析した。今年度も発表はしているが,2011年度には,さらに,論文や学会報告でこの4年間の成果を報告ししたいと考えている。 本年度の調査の主たるものは,愛知県の大手派遣会社Bが雇用しているブラジル人労働者に対するアンケート調査である。B社の全面的な協力を得て,9月から10月にかけて約900票を配布,B社の営業所に勤務するブラジル人担当者に回収してもらい,11月に約500票を回収した。これまでの調査が聞いてきたブラジル人の定住志向かデカセギ志向かを問うのと同時に,2008年秋以降の経済不況が個別のブラジル人にどのような影響を与えたかを中心に聞いた。現在,入力が終了し,自由回答の翻訳も終了,本格的な分析を行う準備をおこなっている。経済不況の影響は大きく,対象者の51%が失業経験,8割が仕事および収入が減少したとこたえ,22%が生活保護を受けたと答えている。こうした不況がかれらの定住志向にどう影響を与えるのかを引き続き検討したい。 さらに,補充のインタビュー調査,支援団体へのインタビュー,県・市の担当者への聞き取りを重ねてきた。そして,「多文化共生」と呼ばれる政策理念と社会統合のあり方との関連を考察していきたい。不況によってあらわになった「役にたつ」外国人との共生のみを考えてきたこと,そして,これまでの多文化共生施策からこぼれおちてきた人の問題をインタビューからひろいあげ,論文等でさらに報告していく予定である。
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