研究概要 |
本年度は、障害者を排除する社会構造がいかにして構築されてきたか,歴史的文献をもとに考察した。とりわけ、日本近代の社会秩序構築が以下にしてなされてきたかについて、障害の医学モデルの構築の起源を解明すべく、病者・障害者排除の典型として、ハンセン病への社会政策が近代においていかなるものであったか、社会福祉制度のかかわりについて分析を行った。その結果、(1)江戸期以来の身分制度において「排除の差別」の対象となっていた、病者・障害者(現在のカテゴリーでは,重度知的障害者や重度重複障害者、統合失調者を代表とする精神障害者)の排除が、近代以降も引き継がれており、(2)その典型として、ハンセン病者への国家による社会政策があり、障害の医学モデルの起源となっていること、また、(3)医学モデルによる近代社会秩序構築に「養育院」という場が深く関与していたこと、そのキーパーソンとして、渋沢栄一、および光田健輔がいたこと、そして、(4)近代におけるハンセン病対策でとった隔離収容型の社会的処遇が、戦後に続く重度障害者にたいする社会福祉政策におけるコロニー型政策のモデルとなった。そのような社会政策の影響は今日もあり、(5)「排除の差別」の対象となっていた重度障害者処遇の隔離収容主義に対して専門家から疑問が提出されないだけでなく、(6)一般社会の人びとによるスティグマが残されたままとなる要因を形成していることが明らかとなった。
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