第3回「健康よろず相談会」の開催と、京都市の行政関係者・民間医療関係者へのヒヤリングを通して、路上生活者の健康状態、医療サービスへのアクセス上の問題及び退院後の処遇について調査した。当市では、小規模な多数の団体が個別に活動しており、当事者にとっても支援サービスの全容がつかみづらい。行政も、支援団体との協働をはかることを含めて、支援サービスのグランドデザインを描けているとは言い難い。当事者の健康問題に即してみれば、精神も含め疾病を抱えている人が多く、ホームレス状態が長く続くほど、病院や公的機関の敷居は高くなり、医療券が取得し易いにも拘らず罹患しても病院に行かず、支援サービスの利用や生活保護申請への足も遠のく、といった悪循環に陥る。いったん入院しても、行政と病院側との齟齬や本人の理解・表現能力の問題も絡み、退院後必ずしも居宅保護へ移行する訳ではない。ホームレス状態から脱却するための歩みには、このように疾病一つをみても、通常では想像し難い多種多様なリスクや困難が重層的・複合的に付き纏う、という実態が明らかになった。 特に、疾病を抱えている当事者の問題は、より深刻である。ヒヤリングによれば、行政は当事者が退院と同時に生活保護停止になることの重要性は認識していても、その実態を十分把握してはおらず、労働組合においても、「(退院即生活保護の停止は)あり得ない」という反応である。従って、入退院に際しても、支援者による後見人的な帯同は、当事者の利益擁護の点から、決定的であることが明らかである。医療券発行は、一説では70年代から、遅くとも80年代半ばから行われている。しかし、当事者には、少なからず知的障害・精神障害の縁辺者がいることを勘案すれば、医療券発行の狭間で疾病者が十分救済されず、むしろエアポケットになっている可能性があることが、判明した。(775字)
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