現在、関西で活動しているハンセン病療養所入所者・退所者の支援者の会の総会に出席し、活動報告を聞くとともに、その会につながる「退所者の会」のメンバーのうちの数人からライフストーリーを聞いた。妻に話すことなく来た既退所者(ここでは退所者への給与金などが整った2002年以前の退所者をさす)は、訴訟に参加することになってはじめて打ち明けることにした。そのとき既退所者の友人の力を借りなければ自分ひとりではどうしようもなかったと語った。また、ある既退所者は、家族が自分を嫌わなかったおかげで、障害があっても数十年前に退所し、一般社会に生きることができた。現在、「集えるところ」があることが非常にうれしいという。 また、5年ぶりに開かれた国際ハンセン病学会(ILC2008、於インド・ハイデラバード)に出席し、ハンセン病医療の最先端を知るとともに、世界のハンセン病回復者がIDEA(共生・尊厳・経済的自立のための国際ネットワーク)メンバーとして一同に会するのを目の当たりにした。そこでは、スティグマ、アイデンティティ、人権が主題となっており、回復者の視点からいまだ継続するハンセン病問題について議論が行われていた。各国にあるハンセン病コロニーは、断種堕胎によって再生産が途絶えさせられた日本と異なって、子どもの教育が行われ、それが外部よりも高水準になり、それゆえ外部から人が入って交わるようになったという報告やハンセン病が過去の病気となりつつある現在、だんだんと外国から注目されなくなることを危惧するコロニーの住民たちのエスノグラフィ調査の結果など、たいへん興味深い報告が行われた。医学的議論では、新患数が減少しないという事実を認めた学者たちが、多剤併用療法によって制圧可能と考えてきたWHOの方針について、批判的に検討しはじめたことがあきらかになった。
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