研究目的:本研究の目的は主体的に生活し社会参加を実現しているALS患者の「ニッチ」及び「ニッチ形成」には何らかの共通性があり、かつその共通性はコミュニケーション支援の実態を中心に据えることで抽出が可能である、という仮説を検証することであった。 平成19年度実績概要:上記検証を行なうために、ALS患者・家族・支援者に対する縦断調査を実施した。調査結果の録音物20時間分の逐語録を作成しデータ化した。 平成20年度実績概要:北海道在住の新規ALS患者と支援者の開拓をおこない、結果的に1名の調査を追加できた。つぎに、データ化した逐語録の分析について、調査計画段階では(1)事例研究法による分析、(2)ソフトウェアを使用した量的分析法による分析、(3)M-GTAによる分析の3つを予定したが、データ読み込み段階において1事例の会話内容に特徴が見られたため、この1事例についてのみ(4)一般コーディングによる分析を追加した。現在までに、これら4つの分析を進め、3つの研究成果を発表できた。研究成果の概要は以下のとおりである。(1)の分析では、10年前と比較した2次元座標軸上にコミュニケーション維持状態を布置した図を作成できた。仮説を支持できる結果を得、学会発表を行なった。(2)の分析では、「ニッチ」の実態の手がかりを与える個人と環境との関係図を個別に示すことができた。本結果について調査報告書を作成することができた。(3)については、すでに概念化までの作業を終えており、平成21年度中に学会発表を予定している。(4)の分析では、完全なコミュニケーション障害に至った娘を介護する母親の実態を示し、これまでの中途障害者を介護する母親研究にはない課題を提起できた。本結果について学会発表を行なった。
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