本研究は札幌市内各地区で人口構成がどのように変化し、どのような地域課題(都市問題)が発生しているのかを明らかにする。そして、地域課題を解決するために行政と地域が取り組んでいる活動の内容と協働態勢のあり方を評価し、今後の活動の方向性を提言することを目的とする。 平成19年度は人口構成・世帯構成・婚姻・就労・通勤通学・婚姻・居住・地価・まちづくり活動等のデータを収集し、札幌全体の「社会地図」と87地区の「コミュニティカルテ」を作成した。平成20年度は市内87地区のまちづくりセンターに報告書を送付し、そのうち9地区で住民参加によるワークショップをコーディネートし、地域課題の優先順位と確認とその解決策の検討を行った。 平成21年度は、15地区の住民を対象にワークショップを開催するとともに、北海道新聞の札幌在住モニターを対象とするWEB調査を実施した。調査では地域課題の優先順位と解決の取組への評価および、対象者自身の生涯学習・社会参加・地域貢献への関心と実践について質問し、これらの回答傾向の地理的分布を分析した。 以上の研究の結果、札幌市では、(1)中心市街地と地下鉄沿線の「都心地区」、(2)その周辺部の「中間地区」、(3)さらに周縁部の「郊外地区」において特有の都市問題発生状況があり、地域住民のニーズはこれを反映しているものの、地域の諸機関による取り組みは10区の内部で横並びに展開されていることが明らかになった。 市役所の財政難と住民自治の機運の高まりにより、「住民自身による優先課題の選択と集中的な取り組み、およびこれに対する行政の支援」の必要性は自明のものとなった。平成22年度から札幌市市民まちづくり局市民自治推進室はまちづくりの取り組み状況の調査とコミュニティカルテの整備を実施することになり、筆者もこれに参画することになった。客観的なデータ公開と住民活動支援の活動が評価されたと理解している。
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