本年度は回答行動に関するリスクファクター認知の測定を行った。これは当初は昨年度実施予定だったが、衆議院選挙の実施が遅れたことで本年度に持ち越しになったものである。函館(200件)・青森(500件)・盛岡(500件)の三市で全く同じ調査票を二種類の方法で配布、回収率の差をみた。一方は調査対象者からの信頼が得られるように大学の封筒・大学宛の返送・事前連絡を行い、他方は調査主体への疑問が多少とも感じられるような方法(茶封筒・局留め郵便・大学の役職名ではなく研究会名義での送付など)を施した。結果は、より信頼が得られるであろうと予想したグループでの回収率が高く(33.5%、信頼性が低いと認知される方法では28.5%)なり、当初の仮説が立証された。つまり回答に伴うリスクが認知された場合、調査対象者は回答という行動をとらず、その結果として回答率が低下する。 しかしながら、この差は当初の予想よりもかなり小さく、有意な差が見られない地域(青森市)もあった。これは実験条件の設定の仕方に原因があると考えられる。つまり、人為的に信頼感を下げると言っても社会調査の倫理には当然ながら従わなければならず、したがって設定できる実験条件も制限されざるを得なかったことによると考えられる。
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