平成21年度における研究成果は以下のとおりである。 1. 社会調査データの整備と分析 平成20年度3月に行った、高学歴女性を対象にした独自調査(「女性の仕事と生活に関するアンケート」)のデータについて、クリーニングおよび分析を行った。調査は、男女雇用機会均等法による高学歴女性のキャリアの変化を特定するために、短大または4年制大学を卒業した女性を対象とした。均等法を挟んだ世代について、かつ職業キャリアと結婚歴が詳細に明らかになるように調査設計をした上で実施した。分析の結果、未婚の20代女性でも平均して2.1回の転職を経験するなど(主な理由は仕事への不満)、結婚・出産退職以前のキャリア継続性に困難が生じていることなどが明らかになった。また、短大卒女性と四年制大卒女性の間には、就業継続意欲や就業の動機に差異がみられることが明らかになった。日本では女性の学歴と働き方の関係が他の産業社会と異なり、学歴と就業に正の相関が見られないことが指摘されているが、本研究課題が得た最新データは、日本に特徴的なこの関係にも変化が認められることを示唆している。 2.成果報告 「女性の仕事と生活」調査及び他の公開データの分析を受けての成果として、秋吉が日本における情報技術利用機会の不均等と女性の労働市場参加の関係についての論文をフランスのジャーナルに寄稿し、筒井は日本におけるワーク・ライフ・バランスの問題について国際ワークショップにおいて報告を行った。また、調査によってこれまでの職業キャリアに対する満足度のデータがえられているため(分析によれば転職が多い女性ほど満足度が下がっている)、この変数を用いた分析を中心に国際学会での報告を予定している。
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