研究概要 |
本研究はネパールのダリト(Dalit)とよばれる,アトカーストとしてカースト制度の最底辺に置かれた女性たちの社会的地位向上と,国際NGOや現地NGOとの活動の連携を基盤にしたサポートジステムのはかことを目的としている。 ネパールでは11年にわたる内戦終結後,240年間続いた王制の廃止が2008年5月に議決され,7月にネパールのがネパール連邦民主共和国に変わった。2008の制憲議会選挙では女性議員の割合が32.8%と躍進したが,ダリッド女性の地位向上べの動きは緩慢と言わざるを得ない。近代思想のうねりの中に,ヒンドゥー教を国教としてきたネパールでは,浄穢思想や貴賎思想,家父長制に基づく家思想,ジェンダー問題などが生活文化に深く根づいており,複合的な差別構造が生み出されている。 「貧困」は所得や資産など物質的不足などの経済的要因だけでなく,教育や保健などの基本的社会サービスを受けられない、意思決定過程への参加の機会がない等の社会的・政治的要因に起するとえられ本研究では「人間開発」の観点からダリット女性の「自立と開発能力」支援の問題を中心に据え,NGOサポート連携システムの研究を行った。 ダリッとの女性たちが設立したNGOのFEDO(Feminist Dalit Organization)では,所得向上のため活動地区の村落開発委員会(VDC)1件につき7,500ルピーの回転資金を融資し,金銭管理,帳薄,家畜の飼育,野菜の生産などの技術指導等やグループ貯金活動(マイクロファイナンス)を推進している。そこでの効果の運用の課題も見えてきており,それらを克服するためにも現地NGOと国際NGO,また他団体との連携サポートシステムが不可欠である。さらに,政府やNGOの支援関係が“個々のダリット女性"に効果的に働いているのかどうかを検証することが重要である。
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