本研究は参加行動や人間関係を含む多次元的な社会構造を解明することを目的とする。とくに構造と意識、関係的資源保有、社会参加との関連に着目し韓国において独自の社会調査を実施した。本年度は、これまでと性質の異なる地域として忠清南道の大田市を選び、参加や関係的資源、階層構造の評価、その他の社会意識等について質問項目を設定し、1500人対象の統計的社会調査を実施した。市内の各地点の人口をもとに無作為抽出を行い、大田市の又松大学の協力を得て大学生を調査員として雇用した。予算は調査の回収作業謝金や調査票印刷費などに用いた。一連の研究により、韓国の首都、第3の都市である大邱、春川市、大田市におけるデータと、日本の3地域、計7地域におけるデータを得た。データはホームページ上で公開した。調査会社に委託せず、学生を調査員として直接雇用して厳密な社会調査を実施しデータの質は良い。韓国の町内会長にあたる統長や里長へ聴き取り調査も行った。また台湾における最近の社会調査実施の状況について、研究機関を訪問し聴き取りも行った。分析結果を見ると、個別接触について、数年に1度以上の経験は、男性では、韓国は15%前後であまり地域差がなく、日本農村で約2割、東京は約1割だった。女性は男性よりもやや少ない。ボランティア活動や消費者運動は、韓国男性は3割前後、東京は1割強、日本農村部は3割近くだった。また、韓国は日本より平等志向が強く、日本では農村部ほど平等志向が強かった。女性は男性よりもやや強い。また韓国の方が、親の社会的地位が出世に必要という回答が多い。平等志向に関する重回帰分析によると、韓国男性は年齢と学歴の規定力が有意だが、日本男性は学歴のみだった。日本女性は複数の地域で学歴が有意だが、韓国では地域で一貫した傾向はない。調査データを分析して英語論文として米国社会学会で発表した他、韓国と台湾でも成果を発表した
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