近い将来、世界的に淡水が逼迫し、深刻な課題となるであろうという予想のもとに、人びとの水(淡水)利用実態を分析しようとするのが、この研究の政策的な関心である。もっとも、この研究は上記の関心をもう少し絞って、コミュニティがどのように水利用と関わっているのかという地域の住民の日常の水利用を考えようとしている。その理由は、地域住民の水利用の実態とその考え方が、水政策に影響を与える側面が少なからずあると想定するからである。 本年度は、水利用に必要な文献データの収集と、現地での調査を行った。現地調査は中国と沖縄の調査を中心として、それと琵琶湖など、すでに本研究の代表者が長年調査をしている地域の調査とを行った。本年度はとくに、湧き水の調査と、調査の過程で、森林のあり方が意味を持つことを学び、森林と湧き水との関係についても調査の項目に加えていった。 調査内容は、過去の水利用の実態を聞き取りで、編年的に追っていくようにした。コミュニティを単位として、コミュニティ全体で、どのような水利用のルールがあり、そのルール下で、人びとはどのような利用をしていたのかを知ろうとした。また、そのルールの基礎に、山や水に対する信仰があるので、山の神や水の神についての信仰についても調査をした。それに加えて、水利用の実態を左右する水質についても、かなり丁寧な測定をした。具体的にはとくにCODおよびリンとチッソの測定をした。コミュニティ内の小さな湧き水や溝や、小川において、水質を調査し、その水質と水利用の実態、およびその地区ごとのルールを知るためである。これらを総体として理解することで、地域での水利用の今後のあり方を検討してみたいと思っている。
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